のび太です。
最近仕事もプライベートもやや忙しくて更新のペースが落ちています。忙しくなると録画した番組の消化が遅れて、あっという間に容量がいっぱいになってしまいます。ちゃっちゃと見て消していきたいんですが、片手間では見たくないものが多いのでなかなか消化が進みません。
片手間で見たくないものの中に、いくつかのドラマがあります。例えば、大河ドラマ『西郷どん』。大河ドラマは毎年見ているわけではないんですが、今年は全部見ています。面白いです。
そしてもう一つ、今一番真剣に見ているドラマが『透明なゆりかご』です。
このドラマは産婦人科で働いていた作者が自身の体験を元に描いた漫画が原作になっています。命の最前線で、いいとか悪いとかの枠でくくれない事情を抱えた人たちと接しながら、子供ってなんだろう、人を生むってどういうことだろう、と考えたくなるドラマになっています。
このドラマ、今年見た他のどのドラマより気に入っています。ベストドラマオブザイヤー2018(私の個人的な賞です)の最有力候補です。基本的には一話完結ですが、全体を通して主人公の女の子であるアオイ(あおい)やその周りの人物の人生も描かれています。そのそれぞれのキャラクターが丁寧に描かれていて、設定の矛盾が気になったり急展開に戸惑ったりするようなことはありません。出産したわが子を病院に置き去りにする高校生、いつも機嫌の悪い妊婦、出産時に妻を亡くした夫、格安で堕胎処置を引き受ける老医師、どの登場人物にも共感を抱いたり、そこに至るまでの道筋に納得がいく描き方がされています。また、アオイは漫画にはいない、このドラマにだけ登場するキャラクターとなっていて、現場で他人と関わりながらアオイ自身の問題についても解き明かされていきます。
一番良いところは、作り手が結論を押し付けないところです。難しいこと、とらえどころのないこと、割り切れない気持ちをそのまま伝えようとしています。人生は千差万別、万人に共通する解決方法なんてないのが現実で、命の現場においても苦しむ本人に他人がしてあげられることなんてほとんどない。産科の先生や看護師たちはせめて本人に寄り添いたいと考えるものの、その方法もまたそれぞれ。正解も結論もない日々をただそのまま伝えることで、見ている人に自分と照らし合わせること、想像することをうながしているような気がします。
そして、俳優それぞれの演技がとてもよいです。表情やしぐさの一つ一つが自然でリアルで、唯一アオイが時々大袈裟に喜んだり驚いたりするところが気になることもありますが、これは俳優それぞれの力なのか、それとも演出家が優れているのか気になるところです。
ちなみに演出は
1話から4話:柴田岳志
5話から8話:村橋直樹
9話:鹿島悠
となっています。全員知らない名前です。
特に、アオイを演じる清原果耶に第1話から引き込まれました。アルバイト初日の病院でいきなり中絶手術に立ち会ったんですが、若さゆえ中絶という行為に嫌悪感を抱きながらも、「処置後」の赤ん坊に対してやさしいまなざしを向けていました。気持ちと台詞と表情がマッチしていて、特に「理解できないこと」「どう処理したらいいのか分からない気持ち」に直面したときの表情は、この子にしかできないと思わせるものでした。『べっぴんさん』の芳根京子に引けを取らない演技です。ただ、もともとそういう表情が似合う顔でもあると思うので、いわゆるはまり役なだけかもしれません。
産科の医師、由比朋寛を演じる瀬戸康史もよいです。この人は『朝が来た』や『海月姫』でも見ましたが、今回の役はそのどれとも全然違っていて、かつ心理描写がとても難しい役だと思います。気持ちを顔に出すアオイとは反対に、医師である由比は気持ちを隠さなくてはいけません。でも単に無機質で冷徹なだけの演技ではリアリティがなくなってしまう。医師として感情を抑えつつも、患者のことをよく気に留めている役回りを上手に演じています。
このドラマには個人的にもう一つ特筆するべき点がありました。それは第7話で見ることができますが、清原果耶、葉山奨之、片山友希の3人が出演しています。ピンとくる方もいるかもしれまんせが、この3人は去年テレ東の『セトウツミ』で共演しており、あのドラマで主要4人を演じたうちの3人がこの『透明なゆりかご』に抜擢されているのです。『セトウツミ』はベストドラマオブザイヤー2017なので、ここでまた3人見られることに驚いたし、それぞれあの時とは違う演技を見せていてすごいと思いました。放送は残りわずかですが、ドラマの内容、俳優の演技ともどもこれからも楽しみです。
一方で、このドラマを見始めてから『半分、青い。』の出来の悪さがより目立つようになりました。脚本も演出も雑だとしか感じません。あれは朝ドラ枠でなければ絶対見るのやめてるやつです。