しずかです。
最近自宅のテレビとレコーダーが新しくなり、過去数日間のテレビ番組が丸々録画されるようになりました。
暇つぶしに番組表を観ていると、NHKのプロフェッショナル~仕事の流儀~で、小児神経科の友田医師の特集があったので観てみました。「傷ついた親子に幸せを」というタイトルで、子どもの発達障害で切実な想いを抱えた親子が全国から訪ねてくる日々を追ったものです。
この友田医師は、ハーバード大学と共同研究で、親からマルトリートメント(虐待や不適切な養育)を受けた経験をもつ人の脳が形態的・機能的に変化していることをMRI画像で記録し、世界で初めて科学的に証明したそうです。これは、「頭をぶたれたなどの体罰によって外傷が原因で脳がダメージを受ける」とかいう類のものではなく、例えば、暴言を受けた場合は聴覚をつかさどる脳のエリアが、父親が母親を殴るなどのDVを目撃した場合は視野をつかさどるエリアが小さく萎縮していくというものです。心理的ストレスが脳の防衛本能を引き起こし、形状を変化させていくらしいです。
これまで虐待で何らかのトラウマやダメージをもつ人に対する治療は、突き詰めれば「昔のことは忘れて新しい人生を生きよう」というような精神論や前向きになれる薬を使った療法で解決しようとするアプローチが多かったように思いますが、実際に脳がダメージを受けているのであれば、治療は非常に困難ですね。しかしながらカウンセリングなどのケアで脳の損傷が回復することもあるそうで、(それを証明することはまだできていないようですが)、友田医師はそれを信じて、日々患者の心に寄り添う診療を続けているそうです。
今回初めて知った言葉ですが、「マルトリートメント」というのは「不適切な養育」という意味で、暴力や育児放棄だけでなく、親が子育てに不慣れである場合に子どもに与えてしまう適切でない言動すべてが当てはまるそうです。はじめから完璧な親なんていませんから、どの家庭にも起こりうることだと思います。
私自身も、子ども時代に両親から日常的に暴言を受けたり、厳しいルールのもと言動の制限があり、自由がほとんどない家庭で育ちました。当時は家族とはそういうものだと思っていたのでなんの疑問も持たなかったのですが、社会人になって他人との関わりの中で生きにくさを感じ、なぜ自分はこうなのかを突き詰めると、それまでの家庭環境や生い立ちに問題の根っこがあることは明らかでした。脳の萎縮とまではいかなくても、私の人生や人格に大きな影響を与えたことは間違いありません。
そんな苦い経験から、自分が子育てをするときは、親を反面教師にして、同じやり方は絶対にしないと決めています。ですがその想いがあまりに強く、親とは逆のことをしようと意識しすぎるあまり、子どもが別の方向に突き進んでしまうのではないかという心配をしています。
子育てなんて、みんなはじめは素人です。それぞれが自分の代で自身の信じる子育てをすると、まるで振り子がゆれるようにあっちへいきすぎたりこっちへいきすぎたり、ちょうどいいところで止まれない状態が何世代にも渡って繰り返されます。これでは何十年、何百年経ってもよい子育てが伝達されず、向上していきません。母と祖母の関係を見るかぎり、うちの一族は行ったり来たりを繰り返してきたように思います。私はうまく子育てできるのでしょうか。正直、自信がありません。
不安な気持ちをのび太くんに打ち明けると「俺がいる限り大丈夫」と言ってくれました。私もそう思います。どんなことも一緒に考えてくれ、問題解決の能力やバランス感覚に優れた人です。のび太くんに出会うまで、親のことや生い立ちのことを誰かに話したことはありませんでした。この人なら一緒に生きていけると思って結婚しましたし、この人が旦那さんでよかったとあらためて思いました。一緒に悩みながら、自分も成長していける子育てをしていきたいと思います。